引用元: https://hobby7.5ch.net/test/read.cgi/occult/1129644145/


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198: 
雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ ID:PNIY4EKH0
後輩の話。


部活で山を縦走していた時のこと。

行程の内で、腑に落ちない地形が一ヶ所あった。

なぜか緩やかな場所を外して、傾斜がきつい所でキャンプすることになったのだ。

少し離れた位置に、快適そうな広いなだらかな地形が見えていたのに。

また、そちらの方が水場にも幾分か近い。


なぜあっちで野営しないんですかと尋ねてみた。


質問に対する先輩の答え。

 あそこでキャンプすると火が使えないんだ。

 いや違うよ、火気厳禁とかそういうんじゃない。

 炊事とかである大きさの火を起こすと、すぐにその火が歌いだすんだ。

 女の鼻歌みたいな感じで、言葉とか何言っているのかはわからない。

 ま、気にしなければハイそれまでよってくらいの話なんだけどな。


・・・聞いてみたいな、一回くらい。

ちらっとそう思ったらしいが、いまだ実行できてはいない。


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185: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ ID:Wu2V5BPx0
知り合いの話。


彼の奥さんが寝ていると、深夜誰かに起こされたという。

「もし」という呼び声で目を覚まされたのだが、枕元には誰の姿もない。

寝惚け眼なのであまり奇怪にも思わず、布団の上に正座して見えない客人に応対していると、どうやら次のようなことが判明した。


「突然仕事が舞い込んで来たのだが、今のままではとても手が足りない。どうか近所のよしみで、貴女の手を貸しては頂けないだろうか?」

近所付き合いを大事に考えている奥さんは「いいですよ」と即答していた。

近所って何処の家? 仕事とは何? 自分は何をすればいいの?

なぜかそういう類いの考えが、まったく頭に浮かばなかったという。

すると「ありがとう」という応えがあり、そこで初めて頭がシャンとしたが、声の気配は掻き消すように消えてしまう。

変な夢を見たわね、そう思い再び就寝した。


翌朝目覚めてみると、何とも困ったことになってしまっていた。

右手の感覚が失くなっているのだ。肩から下が、動かすことは出来るのだが、神経が死んだかのように何の触覚も伝えてこない。

突付かれてもそれがわからない程の症状だったという。

大慌てで病院にかかったが、精密検査の結果はどこにも異常がないと出た。


困り果てて、もうこうなったら大きな街の病院に行くしかないかと夫婦で話し始めた頃。

丁度、変な夢を見て一週間目の夜だった。

やはり深夜過ぎに「助かったよ。迷惑をかけたね」という声を聞いた。

果たしてその翌朝、右手はすっかり元通りに復活したという。


近所のお婆さんが言うには、そりゃ山の神様だろうと。

なんでもこの辺りの山神は手足が一本ずつしかないそうで、手が足りない折は里まで人手を借りに下りて来る慣習なのだそうだ。

「神様って一体、山の中で何の仕事をしているのかしらね?」奥さんはそう言って小首を傾げていた。


187: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ ID:Wu2V5BPx0
余談。

神様に文字通り貸しを作った訳だ。何か良いことあったんじゃないか?

そうからかうと旦那は少し口ごもり、ぼそぼそと次のように口に出した。


「・・・いや、何と言っていいのかもう・・・凄いんだ・・・」


・・・どうやらあの日以来、奥さん本人は自覚してはいないが、旦那さんにしか、わからない超絶テクニックを授かったものらしい。

詳細はちょっと書けないが、現在夫婦仲は非常に良くなっているという。


150: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ ID:XdnIpLL80
友人の話。


小学生だった夏休みに、実家の山村に里帰りしていた時のこと。

その家では朝顔が沢山咲いており、宿題の観察日記をそこで仕上げようと考えた。

朝が弱かった彼女は、朝顔の蕾に向かって「誰でもいいから待っていて」とお願いしたのだという。

翌朝。案の定寝過ごした彼女が慌てて花壇に行くと、蕾という蕾がはちきれそうな状態のまま咲かずに固まっていた。

「あれっ咲いてないや」そう不思議に思った次の瞬間。

 ぱんっ!

すぐ後ろの山方から、誰かが手を打ち鳴らす音がした。

途端、一斉に朝顔の花が開き始める。

あっという間に、花壇は朝顔の花で満たされた。

花の開く過程というものは美しいなぁ、と実感できたという。

誰かの気遣いに感謝した彼女は、気合いを入れて日記を書き上げたそうだ。


229: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE ID:Vgr4Wn9r0
笹の葉が一枚、ぴんと跳ねた。

意識するほどの風はなく、他の葉はほとんど動かない中、その一枚だけが突然、何かに弾かれたように跳ね上がり、跳ね返り、激しくといって良いほどの勢いで揺れ始めた。


笹の茎はぴくりともしない。

葉に張られたクモの糸でも引っ掛けたのだろうか。

似たような光景は山道だけでなく、街中でも見かける事があるので、それほど気にしなかった。


激しく揺れる笹の葉の脇を通り過ぎると、3メートルほど先の笹の葉が弾かれたように揺れ始めた。

そしてまた、歩くに従って次の葉が揺れる。山道だけでなく、街中でもこれはない。


振り返ってみたが、どの葉が揺れていたのか分からない。

足元では、笹の葉が激しく揺れている。

音でもしやしないかと思うほどの揺れ方だが、特別な音はない。

歓迎、威嚇、合図。

そんな言葉が浮かび、偶然という言葉が、それらを否定した。

230: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE ID:Vgr4Wn9r0
息をつき、次の一歩を踏み出した。

瞬間、空気が弾け、足をすくわれ、転倒し、這いつくばった。

頭上、空気が唸った。

風が巻き、緑が香り、寒気を感じた。

笹の葉ではなかろうと、すぐ思った。

よほど大きな何かが、俺めがけて殺到したのだと思った。

小さな、軽い何かが首や肩にぱらぱら当たった。


目を開けると、杉の枝が見えた。枝だけではない。

左の斜面から、杉の木が倒れ込んできていた。

根元の土は掘り返され、空気に触れたばかりの土特有の色と匂いがあった。


意地になって杉の木をまたぎ、先へ進んだ。

20メートも歩いてから振り返った。

予想通り、倒れている木など、どこにもない。

どの木が倒れていたのか、分からなかった。


誰が、あるいは何が悪戯しているのだろう。


174: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ ID:zHTg/kaJ0
友人の話。


彼女の実家では蜜柑を作っている。

季節によっては一部を開放し、蜜柑狩りなどさせているという。

蜜柑畑のある山の斜面は、彼女の大好きな場所の一つなのだそうだ。


その斜面の一角に、奇妙な蜜柑の木が一本生えている。

周りには何重にも柵がしてあって近寄れず、手入れも収穫もされていない。

ただあるがままに放っておかれているのだと。

畑の一番奥外れなので、普通は寄りつきもしない場所でもあるとのこと。


ある時、その蜜柑の木をわざわざ見に行った。前から気になっていたのだ。

間近で見るのは初めてだが、まず尋常な雰囲気ではない。

一番外側の柵には、縄が幾重にも巻きつけてある。

ぶら下がっているのは御札であろうか。読めないので詳しくはわからない。

柵囲いの中で、収穫されない蜜柑が地に落ちてグズグズになっていた。

彼女の目は落ちた蜜柑に釘付けになった。


落ちて間もない蜜柑、かなりの時間が経った蜜柑、そのすべてが一つの例外もなく、破れて覗いている中身だけ、まるで腐っているかのようにどす黒かった。

・・・外側の果皮には何ら異常は見られないのに。


何となく嫌なものを感じて、その場を離れた。


彼女はその蜜柑の木に関して、何か因縁があるのかと疑っているという。

「いやね、本家筋の人って自殺した人多いんですよ」

しかし面と向かってはとても聞けず、今もその木は健在であるそうだ。




新編 山小屋主人の炉端話
工藤 隆雄
山と溪谷社
2016-10-14




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